ご心配をおかけいたしましたシャビのその後,実は・・・

May 12, 2008

シャビの病理診断報告書

病理診断の結果が出ましたので,皆様に全文をご報告致します。

[病理診断]
肉芽腫性炎症の疑い(悪性所見は観察されず)

[所見]
採取された標本において,円形?不整形の核と,高酸性でやや多形の細胞質を持つマクロファージが,病巣内を充実性に増生しています。
これら円形細胞は核小体の明瞭化や大小不同などの異型を示し,核分裂像も観察されますが,明瞭な悪性所見は標本上では確認されません。さらに病巣内には好中球やリンパ球の浸潤が散見されます。

[予後]
悪性所見は確認されませんが,原因が不明である事,増大傾向が観察される事から今後とも腫大化する場合は再検査を実施してください。

[コメント]
細胞診では由来の特定には至りませんでしたが,組織検査では異型を示す円形細胞は炎症に反応したマクロファージと考えられます。特に病巣内には好中球などの炎症細胞も浸潤する事から,肉芽腫性の眼瞼炎と診断されます。

本症例では,臨床的に骨融解が観察される事,増大傾向が観察される事から腫瘍性病変の可能性を考慮する事が必要です。さらに、組織検査においても軽度な異型を示す円形細胞が確認される事から悪性の円形細胞腫瘍との鑑別が必要となりますが,病巣内には好中球などの炎症細胞が浸潤される事,悪性腫瘍を示唆する増殖像が観察されず 、肉芽腫性炎症に観察されるマクロファージの増生像を示す事から,病理組織学的には肉芽腫性炎症と診断されます。

猫あるいは犬では,眼瞼に肉芽腫性の炎症が発生する事があり,まれに両眼瞼に多発することがあります。この眼瞼に発生する肉芽腫性炎は切除後もしばしば再発し,増大傾向が観察される事が特徴です。原因は組織像からはマイボーム腺炎が関連している可能性が推測されますが,多くの症例では原因が不明です。

予後については,細胞診では腫瘍性の病変が疑われ,臨床的にも腫瘍性が疑われる増殖像を示していますが,組織検査では肉芽腫性の炎症と診断される事から炎症性病編としての治療による経過観察が必要です。ただし骨融解の原因が不明である事から骨融解に付いては他の病変が原因となっている可能性も推測されます。そのため経過には十分な注意が必要です。特に本症例では臨床的に腫瘍性が疑われる変化を示す事から、再発や増大傾向が観察される場合は再検査を実施してください。


補足(wikipediaより)
*マクロファージ
マクロファージ(Macrophage, MΦ)は白血球の1つ。免疫システムの一部をになうアメーバ状の細胞で、生体内に侵入した細菌、ウイルス、又は死んだ細胞を捕食し消化する

*マイボーム腺
マイボーム腺(マイボームせん、Meibomian gland)はまぶたの縁にある特殊な皮脂腺の一つで、目の涙液膜の蒸発を防ぎ、涙が頬にこぼれ落ちるのを防止し、閉じたまぶた内を気密にする働きを持つ油性物質(皮脂)の供給をつかさどる。瞼板腺(けんばんせん、tarsal glands)ともいう。マイボーム腺は上まぶたには約50本、下まぶたには約25本存在する。

at 16:32│Comments(0) シャビの闘病日記 

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